ゆっくりいこう

15週と2日。
よく晴れていた。

父に運転してもらい、やっと心療内科を受診できた。
引き続き休職との診断だった。
薬の効果が薄いかもしれないとのことで、様子見で減薬となった。

現職に復職することは、医師は懸念があるようだ。
私もそう。立ち仕事で接客の為に持ち場を離れられないことを不安に思っていた。
けれど医師は、精神面を気にしていた。
たしかに、現職での休職は2回目だし、
正直、人間関係が今回体調を崩した大きな原因だ。
辞めるにしても、一度戻って引き継ぎなどをするつもりだったが、よく考えた方が良さそうだ。

帰宅してからまた少し体調を崩した。
ゆっくり、ゆっくりいこう。

ケーキ2

ケーキ1の続き。

彼に、仕事を続ける気がないことを伝えた。
前撮りをする体力がないことも伝えた。
顔合わせも難しいかもしれないことを伝えた。
職場の愚痴や滅入った気持ち、体調の悪さも伝えた。
周りからの励ましや応援が辛いことも伝えた。
家族への複雑な想いも伝えた。

全て聞いてくれた。話してくれてありがとうと言ってくれた。

さらっと死にたいと言った言葉も、さらっとわかるよと言ってくれて。
私は、また生きようと思えた。

体調が回復したら、今までやってみたかった仕事を少しずつやってみよう。
最初は稼げないと思うけど、地道にやってみたい。
前撮りも顔合わせも、体力が戻ってからでいいんだ。
辛かった経験は、今後に活かしたらいい。
誰かと居て辛いなら、距離を置けばいい。

少しずつ、少しずつ、彼と、歩んでいきたい。

ケーキ1

14週と4日。
晴れてた。

お昼、彼氏からラインが来た。
電話したいという。
なんだろう、何か相談だろうか、と思ったら、
「何か食べたいものある?」
何か差し入れしてくれるのかな?と聞いていたら、
食事の誘いだった。
嬉しかったけど、外に食べに行ける体調ではないから、うやむやにして会話を続けた。
色々話しているうちに1時間経っていた。
「しろと話してると時間経つの早いな」
そんな言葉が、こそばゆかった。

電話を切ったあと、やはり会いたくなって、
甘いものを食べたいとラインした。

おやつの時間くらいに来てくれた。
ヨロヨロしながら迎えに出たら、なんで出てきたの、寝てなよ、と言って、
ケーキを買いにまた出ていった。
私と一緒に外でスイーツ食べるつもりだったらしい。そこまでは気が回らなかったか、言えばよかったな、と思いながらベッドに横たわって待っていた。
しばらくしたら、白い箱を持って帰ってきた。

頭がぼうっとする。足取りはふらつく。
目をずっと開けていられなくて、彼の顔を見ずにうつむく。
彼の分のインスタントコーヒーを淹れて、箱を開ける。
キラキラしたケーキが2個入っていた。
とても美味しかった。

ふたりでゆっくり話しているうちに夜になって、
母が帰ってきて私達に話しかけてきた。
おしゃべり好きな母は私から彼を奪ってしまう。
先に自室で待ってる、と伝えてベッドに横になっていたが一向に彼は来ない。
痺れをきらして迎えに行ったら、話し込んでいた。
私だって久しぶりに話すのよ、と母は言う。
彼を連れて自室に戻った。

横たわる私に優しく話しかけてくれて、しばらくして彼は帰っていった。

14週と3日。
晴れてた。

1日中、乗り物酔いのような気持ち悪さと頭痛と腹痛で横になっていた。
朝ごはんと昼ごはんは少し食べたけど、吐いた。
食欲がなく、夜は食べられなかった。

母と少し話せた。
彼氏からの電話は無い。

車酔い

14週と2日。
昼間は暖かったけど、夜は寒い。

心療内科に行く、はずだった。

今月に入って2回キャンセルしていた。
当日になって気分が悪く、行けなかった。
今回は3回目のキャンセルになる。1ヶ月近く行けていない。
まあ、体調が良い日の方が珍しいんだけど。

言い訳をさせてほしい。
行くには、自宅から車で5分ほど、最寄り駅まで行って電車に乗り30分ほど、降りてから10分ほど歩かなければならない。
1日2時間くらいしか眠れてない体にはたった数分でも車の運転は危険で、電車もまあまあ人が多く座れない可能性あり。
最近10分も外を歩いた記憶がない。
不眠とつわりとうつのトリプルパンチな状態では、ハードミッションなのだ。

だから、今回こそ行けるように、母にお願いした。
片道1時間くらいかかるが、運転を頼んだ。
今度こそ行ける、と思っていたら、予想外のことが。

車酔いだ。

まあ、元々気持ち悪くて吐きそうな人間が、
ガタガタ揺れる軽自動車の助手席なんか乗ったらそうなるわな。朝も吐いたし。
なのにそこまで想像が働かなかった。
車酔いなんて何年ぶりだろう。子供のとき以来な気がする。
耐えようと努力したけれど、30分ほど運転してもらったところで、もう無理だった。
目的地付近で降りて歩いていける自信がなかった。
帰りも揺られると思ったら耐えられなかった。

Uターンしてもらって、自宅に着いて、よろよろしながら家に入り、ぐったり。
母に頼んでキャンセルの電話をしてもらった。
声を出すのも、絞り出すような掠れ声しか出ないし。
帰り道、なんとなく亡くなった祖母に助けを求めそうになって、病気で苦しんで死んでいったのに死んでからも助けを求めるなんて、とか、
今死んだらあの世でひ孫できたよって報告することになるのか、お腹の中の子供ってすぐ輪廻転生になるのかな、とか、
なんかもう明後日な方向のことを考えて、母にバレないようにちょっと泣いてた。

ただ部屋にこもってるだけでは、治るもんも治らないだろうと、
朝日光を浴びるようにしたり、朝食を自分で作って食べたり、部屋を軽く片付けたり、
ここ2、3日でようやくできるようになっていたけれど、なかなかうまくいかない。
どうやら胃腸が消化不良を起こしているようで、
朝ごはんを普通に食べるのはまずかったらしい。
朝5時に食べたものが昼の12時にリバースされるのだから。蠕動運動どうなってんだ私の胃。
自律神経もだいぶイカれている気がする。手足が暖かいのにお腹はひんやり感じたり、冷えのぼせしたりしている。

来週には、前撮りの衣装合わせがあるんだけど。
まあ、これも1回キャンセルしてるんだよね。
行けるだろうか。

弱気になりたくないんだが、体が言うことを聞いてくれない。
彼氏も疲れているのか、夜時々してくれた電話もここ最近無い。先日悩みを吐いてしまって迷惑かけたから、甘えづらい。

まったく、どうしたものか。
ベッドでうめきながら、こうしてネットに辛みを吐き出す日々に、早く光が欲しい。

有毒なヘドロ

13週と6日。
朝、雨が降ってたけどいつの間にか止んでた。

昨日は比較的体調が良くて、油断していたのかもしれない。

体を動かしたら眠れるだろうかと、軽くストレッチをしたのが悪かったのか、
口が乾くし唇が荒れるし便秘気味なのは水が足りないからだろうかと、少し多めに水を飲んだのが悪かったのか。

なにかはわからないけれど、昨晩から気分が悪くなった。
吐き気がするままに横になったり起きたりしていて、いつもどおり眠れないまま朝が来て、
いつもより胃が張るなあとおもっていたら急激な痛みが来て。

慌てて寝返りを打ったら、少し収まったけど下痢のときのような痛みがきたから、
トイレに行ったけど出ず。痛みも収まり。
これ詰まって出てこれないんじゃ、と思ってたら何度も激痛がきて。

うちは一戸建てで割と広いけど、私の部屋が一番トイレから遠い。階段も廊下もある。
だからと近くの部屋で転がってると母がうるさい。
だから何回も往復して、やっと激痛とともに出ていった。

その後もお腹がぐるぐる嫌な音を立て続け、
今日は彼氏と会う約束をしていたのにな、
食事は無理そうだ、着替えて化粧したかったけど無理だ、とわかっていたのに、
眠ってしまったらしい、来る時間の10分前に目が覚めた。
慌てて用意できてないことを伝えたけれど、それでもいいと来てくれた。

彼氏も体調が悪そうだ。
これは早く重要な決めごとだけ話して帰って休んでもらおうと、お互いにしんどくて言葉を発しにくいけど決めた。
きっと私を気遣ってそばにいようとしてくれたんだろう、なかなか帰らない。

もっと頼って欲しい、悩みを話して欲しい、と言われ、甘えてしまったのが悪かった。
私の個人的な悩みをつらつら話している内に、彼の体調が悪化してしまった。

ほら、あなたもいっぱいいっぱいじゃないか。
だから話さないようにしていたのに。

そのあとしばらくして帰っていった。

私の愚痴や悩みは有毒なヘドロみたいなもので、
吐けば聞いた人に害を及ぼす。
だから私は話さない。吐かない。
信頼する人を害するくらいなら、私が毒で死んでしまったほうがいい。
もしかしたら、胃腸の調子が悪いのになかなか出ていかないのは、繋がっているのかもしれないな。

卵かけごはん

13週と5日。
晴れてた気がする。

彼氏と昼ごはんを食べる予定だったが、
体がしんどくて断った。
用事を終わらせたあと、会いに来てくれた。
横になっている私の手を握って、
仕事やプライベートの話をして、
励ましの言葉をかけて帰っていった。

「大丈夫、良くなるから」

その言葉がとても辛く感じた。
前向きになれない自分に絶望した。

手を握ってくれていること、
そばにいてくれることが嬉しくて、
帰ったあとはやはり寂しくなった。

深夜、卵かけごはんを食べた。
食べちゃいけない大好物。
最後の晩餐みたいな感覚で食べた。
そのくせ、賞味期限ギリギリの卵は避けて、
新しいパックから取った。
明日気づいた母が何か文句を言うだろう。

泣きたくないのに涙が出てくるのがうっとうしい。
肌を伝う感覚、濡れた枕の感触が嫌いだ。
鼻水だって嫌い。

もし私とお腹の子が崖から落ちそうになって、
どちらかしか助けられないなら、
ぜひ子の手を掴んで引き上げて欲しい。